Interview

SHOPと工房が一つになった発想の場

Vol05

Organ

INTERVIEW:桃井将也

ハンドメイドレザーの工房「Organ」があるのは、表参道駅からも原宿駅からも徒歩数分の場所。閑静な裏手通りに佇む可愛いレンガ造りのビル「PINE UNDER FLAT」1階だ。外観のレンガ色とガラス越しに覗く店内の革の色が自然にマッチするお店からは、柔らかくて暖かい雰囲気が漂う。創業当時から同社を担ってきた桃井さんにお話を伺った。

  • 所在地渋谷区神宮前
  • 業種革製品制作・販売
  • 広さオフィス99㎡|ショップ・工房145㎡
  • 竣工年月2016 年6月
  • 設計期間2ヶ月
  • 施工期間1ヶ月

創業者の思いを受け継ぐOrganの誕生

Organの本店で、ドイツ語でハート(心)という意味を持つHERZ (ヘルツ)は、創業者近藤晃理氏の「鞄を作ることが楽しくて仕方がない!」という思いから1973年に誕生。40年間変わらず同じ革を使い続けているという同社は、関東のみならず関西にも直営店を構えている。
そのハート(心)を受け継ぎ新しいラインを生み出す為に2009年12月に新たに生まれたのが、Organ(オルガン)だ。

作る場所と見る場所が一つになっているSHOP兼工房は、全て店内で手作りされた商品が豊富に並ぶ。HERZとは異なる素材感のイタリア革を使用し、革本来の素材の良さが活かされ、どれもシンプルで機能的。どんなシーンにも合わせやすいデザインが特徴。

今ではそのOrganを代表する革職人である桃井さんは、以前はなんと美容師だったそう。もともと職人などのモノを創ることへの憧れが強かったという桃井さんは、革の知識など何もなかったにも関わらず、モノに目線を向けて作ることに没頭するため今の革職人という仕事に挑戦した。

桃井:
僕自身、いざ鞄を作ってみると、これまでこんなにも仕事が楽しいと思ったことがないくらいハマってしまいました。美容師はお客さんが求めている理想のモノを作らなくてはなりませんが、革職人という仕事はとことん自分が納得するモノを作ることで、それをお客さんが欲しいと思ってくれて、そして日々使ってもらえる。自分が作ったものを実際にお客さんが手に取ってくれると、とても嬉しいです。

そんな桃井さんの思いが詰まった製品は、長きにわたり使い手に愛され続けている。

工房をイメージした物件探し

以前のSHOPは渋谷にあり、今ほど広くなかった。そのため、別で2軒隣に工房を借りていたそう。以前のSHOPは、床にモルタルを張り、壁は何もせず真っ白で無機質な感じで、今とは雰囲気が異なる。工房を別で借りていたので、SHOPとの行き来が不便だったり、段々手狭になってきたりしたため、移転をすることに。当初からSHOP兼工房を近くで運営していた同社は、物件探しの際広さやエリアをとても重要視したという。

桃井:
創業当初はまだ3人でしたが、今では10人程に増えました。働いている社員全員が職人なので、制作をしながら接客や事務といったことも同時に担っています。お客さんにもじっくり見に来ていただきたいので、路面に面していないひっそりとした広い場所の物件を探していました。

職人の皆さんが鞄作りに没頭する一方で、来店するお客さんの対応もしなければいけない。人通りがあまり多くない落ち着いた雰囲気の場所を探していたという。

本社が数年前に移転したときにお世話になった不動産屋と、渋谷・表参道・代官山のエリアを中心に探していたそう。2ヵ月に渡りいくつもの物件を見ていた時、立地や広さ、そして路面に面していないなど、全ての条件に合う現在の物件に、たまたま出会ったという。

桃井:
工房の中にお店がある、そんな雰囲気に仕上げたいなと思っていました。工場だと少し冷たい感じがするので、工房をイメージして物件探しはしていました。僕たちにとって、働く場所は発想の場でもあります。ここなら全体的に柔らかくて暖かい感じの作業場になる気がしたのと、広さが決め手でしたね。

そうして2016年11月、HERZ本店から歩いて5分程の場所に位置する、PINE UNDER FLATの1Fに場所を移しリニューアルオープン。
工房が別の場所にあった以前は、オフィスをまたいでパーツを運ぶなどの手間があったが、移転してSHOPと工房が一つになったおかげで、作業もまとめて行なう事が出来るようになり、社員の皆さんも働きやすくなったそう。制作から販売、そして事務作業に至るまで自分達で行っている同社にとって、時間はとても大切なもの。作業の段取りもとてもシビアだそうで、一連の作業が効率化したことは大きいという。

建物の雰囲気を重視した空間創り

オフィス内には様々な工夫がある。
例えば、もとはドア1枚程の幅しかなかった入口は、外に大きく開く両開きタイプのものをお店の正面に位置する場所に新たに作った。扉と入口正面部分に取り付けられた窓も大きいので、外の景色がよく見えてとても開放的だ。

桃井:
この建物自体、外観に味があり魅力的だったので、なるべくその雰囲気を壊さないように、全体的にイメージを合わせて、柔らかい感じに仕上げました。内装で使用した木材も、新木場にある材木所まで探しに行きました。

全ての製品を手作りしている同社は、工房の稼働がストップする期間を短くする為、物件探しから内装のプランも含め、全てを入居までたった3ヵ月で終わらせたという。タイトなスケジュールの中、なんとか予定通りの期間で済ますことが出来たものの、大変な苦労もあったようだ。

桃井:
機械を置く工程には苦労しました。革の型を抜くクリッカーと呼ばれるものがあって、とても大きく重さがあるんです。普通に置くと床の木の部分が抜けてしまうくらいなので、運ぶときにはドキドキでした。

重さ1トンあるという革を加工する機械を、木と太いパイプを使って運び入れたという。搬入時はものすごい緊張感に包まれたとか。

また、もともとスケルトンで平らでなかった床を馴らす為20㎝程、底上げして木を敷き詰め、傾斜だった入口部分をフラットにするのに木材で高さを合わせデッキスペースを作るのに手間がかかったそう。言われないと気付かない程、デッキ部分が建物にとても馴染んでいる。

SHOPと工房、2つの違う空間は全体的に茶系のインテリアでまとめられ、革のいい香りに包まれている。店内の照明は、SHOP部分はオレンジ系の暖かい色。工房部分は革の傷などをチェックしやすい明るめの蛍光灯になっている。取り付けられている照明レールがオシャレだ。

他にも、店内の奥にある工房の作業台は社員の皆さんの手作りだそうで、同社だからこそできる空間創りが特徴的だ。

コミュニケーションの場に生まれ変わる

渋谷に居たころは、狭い空間にSHOPと工房があり、少し入りにくい雰囲気だった。オフィス街で頻繁なお客さんの出入りはなかったという。しかし、今の場所に移転してから立地はもちろん、お店の雰囲気も一気に柔らかくなったのでお客さんの数も増えたという。

桃井:
お店自体全体的に広くなったので、入りやすく、ゆっくり落ち着いて見られるようになった。と言ってもらえます。場所も探しやすいですし、通りがかりの方の入店も増え以前と比べると客層も変化しました。

また、社員同士で月に1回、2階の事務所スペースでパーティーを行うようになったそう。つい先月も、室内でBBQを開催したとか。
全体的に広くなったことで、作業の時間以外にもみんなでご飯を食べたり、お酒を飲み交わしたり、社員同士のコミュニケーションの場にも生まれ変わった同社のオフィス。

桃井:
モノを作るという作業は、内に籠り個々で独立してしまいがち。孤独な部分も持ち合わせる職業なので、みんなでランチやパーティーをするなど、そういった瞬間はとても大事です。表参道や原宿というエリアは、とても元気と活気に溢れているので、通勤時にも日々いい刺激をもらっています。

基本的には、もくもくと作業をする彼らにとって、様々な人が集まる表参道エリアにオフィスを構えたことで、近くのカフェで社内ミーティングをするなどの、良い変化をもたらしているようだ。

その変化が、働く場所、そして発想へのいいスパイスになっているのだろう。
職人一人ひとりによって、丁寧に気持ちを込めて作られた革のモノ達は、今日も誰かの日常に寄り添っている。

 

 

■Office Layout

 

 

 

 

■Company Profile
Organ
WEBSITE: http://www.organ-leather.com/
業種   :革製品制作・販売
創立年  :2009年
社員数  :10人

 

■物件情報
名称   :PINE UNDER FLAT
所在地  :東京都渋谷区神宮前5丁目13−2
構造   :鉄筋コンクリート造 地上2階地下3階建
竣工年  :1998年6月
リノベーション竣工年:2016年6月