Interview

教室を思わせる、シンプルと温かさが交差するオフィス

Vol04

株式会社daicon

INTERVIEW:中山ダイスケ

東京タワーがそびえ立つ東麻布に位置する「THE WORKERS&CO」 ここに株式会社daiconのオフィスはある。NY滞在経験も長く、美術作家として個展やグループ展を行うなど世界的な評価を得ている同社代表の中山ダイスケさん。現在は、大学で教授として講師をする傍ら、様々な企業の商品を中心にデザインを手掛ける。世代や好みを問わず受け入れられるシンプルかつ繊細なデザインを創り出す彼のオフィスには、どこかぬくもりが感じられる。オフィスのこだわりについて代表の中山さんにお話を伺った。

  • 所在地港区東麻布
  • 業種CI・パッケージ・グラフィックデザイン
  • 広さ95㎡
  • 竣工年月2015年12月
  • 設計期間-
  • 施工期間-

シンプルの中にぬくもりを

数多く商品のデザインを手掛けてきた株式会社daicon。エントランスを入るとすぐ右手に黒板が目に入る。チョークや三角定規、白と茶色を基調としたインテリアが、学校の教室を思い出させる。綺麗ですっきりしたオフィスだが、初めて来たにも関わらず、どこか懐かしく、居心地が良い。

オフィスの壁一面には、これまでデザインした商品がたくさん並べられている。黒板を背にひとつひとつ商品の説明を始める中山さん。普段からデザインするときは商品の良さがシンプルに伝わるよう、分かりやすいものを心掛けているという。たしかに、どのデザインもシンプルで、色数は少なく、柔らかいイメージだ。しかし、なぜか目を惹き、思わず手に取りたくなるようなものが多い。商品もオフィスもシンプルなのだが、ぬくもりを感じる。

 

あえてかっこいいインテリアは置かない

そんな彼のデザインに惚れ込んで、同社に依頼してくる人も多い。しかしそれは、クリエイティブやファッション業界の人だけではなく、どちらかというと地方から来た農家の人や、JAの方たちなど、デザインを依頼すること自体が初めての人が多いという。デザイン事務所と聞くと、緊張して肩に力を入れてしまう人が多いと考える中山さんは、親しみやすさを重視したオフィスつくりを心掛けているそう。

中山:
僕自身、「初めてデザイン事務所を訪れました」っていう人が好きなんです。でも、きっとそういう人達って緊張してしまうと思うんですよね。だから、あえてかっこいいインテリアは置かないようにしたり、来てくれた人が話しやすい居心地のいい雰囲気を大事にしてます。

中山さんのおっしゃる通り、インテリアもこれまで訪問したオフィスに比べると馴染みがあるものが多いように感じる。どこかぬくもりを感じるインテリアと、躯体がむき出しの天井や、加工が施されていない床など、無機質でシンプルな素材の、相反する2つが交わることで、全体に一体感を生み、落ち着いた雰囲気を作り出しているようだ。中山さんの、物作りやクライアントに対する想いがオフィスの雰囲気にも滲み出ている。無駄がなくシンプルなのだがとても居心地のいいリラックスした空間だ。

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物件がクリエイティブな人種を惹きつける

週の半分は東北芸術工科大学で教授として教鞭をとる中山さん。東京と行ったり来たりの生活をしている彼にとって、このオフィスはHOMEのようなものだそう。仕事の後にはみんなで近所のカフェに集まったり、入居後は他の入居者の方とも仲良くなり、以前のオフィスに居た頃と比べると圧倒的に交流の場が増えたという。

中山:
このビルのテナントさんには、仕事のためのオフィス使用のみならず、創作活動をするためのアトリエとして活用したり、クリエイティブなコミュニティを求める人が沢山います。また、こういったシェアオフィスのスタイルに慣れている方も多いように感じます。

他のオフィスの方がふらっと遊びに来たり、入居者みんなで屋上を借りてパーティーをするなど、みんなのたまり場にもなっているTHE WORKERS & COの空気感がとても好きだという。

ここへ移転する前は港区御成門の雑居ビルでオフィスを借りていたという同社。オリンピックの関係で退去しなくてはならなくなり、前から目をつけていた東麻布のエリアで物件を探し始めたそう。もともと御成門には、周りに同業者が全くおらず、コミュニティの場もなかったことから、少し寂しく感じていたとか。東麻布にクリエイティブ系の会社がたくさんある事を知っていた中山さんは、家から近いということもあり、東麻布で物件を探し始めたという。そんな時出会ったのが今のビルだ。

中山:
このビルを見たときに“みんな集まれ!!”と呼びかけているように感じ、ここにはいずれクリエイティブな面白い人達が集まり、いいコミュニティの場になるんじゃないかなと思ったんです。物件として物理的に改造することはどこででもできるけれど、集まる人種はそれぞれの場所によって違うので、改めて入って良かったと思っています。

 

完成されていないからこその良さ

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中山さん自身は、これまでも品川の倉庫を借りたり、会社を設立する前のNY滞在時には、商業用のロフトを住居に改造して住むなど、リノベーションすること自体に慣れていた。しかし、日本のオフィス物件は既に内装まで完成されたものがほとんどで、改装するとなると初期の解体工事も必要になり、退去時に原状回復の義務も課せられる。中山さんのような人にとっては、そんな日本のシステムはもどかしいだろう。

中山:
すでに完成された物件は、選り好みされないグレーな色合いで事務的に作られているものが多いけど、好みというのは人それぞれ。例えば濃い色のフローリングが好きな人もいればそうじゃない人もいる。だからこそ、まだ何も手を加えてない状態で最低限のことはしてあげるという貸し方が本来はいいんじゃないかな。

そんな考えを持つ中山さんにとって、壁も床も何も加工されてない、真っ新な空間を借りられることも当施設へ入居する決め手の一つだった。

中山:
まだ何も施されていない状態で内覧させてもらえたことが僕には嬉しかったんです。このゼロの状態からイメージできる人だけ借りてください。っていう、その貸し方のスタイルが当時僕はとてもいいなと思ったんです。

完成されていない空間だからこそ、ゼロから考える楽しさが生まれてくるのだと思う。

ひとつの空間が創り出す一体感

参考資料などがたくさん並べられた本棚やオフィス内でも目を引く黒板が、すっきりとした一つの空間を、ミーティングスペース、アトリエスペース、印刷室の3つの機能に分け、作業効率の良さを考えた働きやすいレイアウトになっている。このオフィスを創るにあたって、唯一悩んだのは、インテリアの配置や空間の使い方だという。

中山:
オフィスの入り口がちょうど部屋の真ん中にあったので、オフィスに入った時の左右の配置をどうするかは悩みました。せっかく広い空間を細かく分けるとなんだか狭い気がしてもったいないので、壁の高さを調整するなど細かな工夫はしました。

中山さんの言う通り、本棚や黒板になっている壁と天井の間には空間が作られていたり、また社員の皆さんが働いているデザイン室もガラス越しに見ることができる。それぞれ用途ごとに仕切られているのだが、一つの空間として、一体感を感じる。

また、様々な企業のデザインを受け持つため、クライアント同士、リリース前の商品を見せることはできないが、楽しく働いている社員の姿を訪れる人にも見て欲しいという中山さんの思いから、収納の位置などを工夫することによって、「見せつつ隠す」創りになっているそうだ。

インタビューの合間にも、働いている社員の皆さんの笑い声が絶えず、皆さんとても楽しそうに仕事をしている姿を何度も垣間見た。
社員の皆さんにもお話を伺ったところ、デザインをすることが大好きで、幼少期の頃から今のような仕事をやりたいと思っていたと、とてもにこやかに答えてくれました。皆さん仲がとてもよくオフィス内の雰囲気はとても和やかだった。

 

「人が貰ってうれしいものを創りたいんだよね。」

そう話す中山さんの表情は、本当に楽しそうでキラキラしていました。今回のインタビューで何よりも私が感じたのは、これまでデザインしてきた作品や商品を紹介しているときの彼の幸せに満ち足りた表情でした。

シンプルだけど、温かい親しみのあるオフィス。
どこか彼の持つ雰囲気に似たものを感じます。この中山さんの人柄が、来た人誰もが笑顔になるオフィスの表情を生み出しているんだろうな。そう思いました。

 

 

 

■Office Layout
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■Company Profile
株式会社daicon  (WEBサイト : http://www.daicon.co/about.html)
※クライアント用WEBサイトのため閲覧制限有り。お問合せの際はお電話にてのご連絡をお勧めします。
業種  :CI・パッケージ・グラフィックデザイン
創立年 :2008年
社員数 :6人

 

■物件情報
名称  :THE WORKERS & CO / ザ・ワーカーズ アンド コー
所在地  :東京都港区東麻布1-4-2
構造   :鉄骨鉄筋コンクリート造 地上10階地下1階
竣工年  :1966年7月
リノベーション竣工年:2015年11月