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古ビル再生|THE MOCK-UP BY PORTAL POINT 麹町

2018.03.26

2018年3月26日発行週刊ビル経営掲載記事


麹町築26年の旧県営ホテルをクリエイティブオフィスへ

この連載企画では、競争力が低下した築古ビルをニーズに適う形でどう再生し、リブランディングしていくのかを弊社物件の事例をもとに解説していく。第三回目となる今回は、千代田区麹町駅徒歩1分の旧県営ホテル石川県紀尾井会館をリノベーションした事例を紹介する。かつて東京都内には地方から出張する公務員や旅行者に向けて多くの県がこぞって保有していた県営ホテルだが、老朽化や維持費の増加から、現在はそのほとんどが閉鎖されている。今回の旧県営ホテルもその一つで、老朽化を理由に、入札の上東急建設へと売却。それを弊社がマスターリースし、クリエイティブオフィスへとリノベーションを実施した。

当施設は、寄宿舎用途の地下3階地上17階建て区分所有ビルの1~4階、約460坪4フロアから成る。かつてのホテルの要素を随所に残したのが特徴だ。35区画あるオフィスはすべてスモール個室型で、以前のホテルの区画割りを利用し、広さは18㎡と36㎡のものが多い。4~8人程度の規模の会社をターゲットに、家具付きプランやSOHOプランを採用。働き方に合わせて様々なスタイルを選べるようにした。スモール個室型のオフィスは、弊社の物件で最も需要が伸びているオフィスタイプである。

このタイプのオフィスを計画する上で、最も重要なポイントのひとつがトイレの位置である。完全個室のスモールオフィスとなるため、専有部にトイレがあるのを好まない入居者が多いのだ。特に女性が在籍する場合は、オフィスを選ぶ条件として挙げる企業も少なくない。そこで、専有部の水回りはすべて撤去し、各階に共用トイレを設置した。築古ビルのオフィスへのリノベーションにおいて、水回りを残すとなると工事費もかさむため、完全撤去は一石二鳥なのである。

また、共用部については、1階にあった食堂をロビーと会議室へと改修した。ロビーや各階の廊下などのデザインはNYのリノベホテルをイメージさせるシックでヴィンテージな空間に仕上げ、ホテルならではのプライバシー感を残した。共有部が充実することでレンタブル率は低くなるが、物件の価値は一気に上がり、小規模オフィスニーズの増加も相まって高い賃料設定が可能になる。当施設でも共用部が入居理由の決め手になったケースが多い。

今回の物件は、かつてのホテルらしさを活かし、その歴史を受け継ぎながら時代のニーズをうまく当て込んだ事例を紹介した。古くなり、競争力が低下してしまったからと言ってすぐに取り壊してしまうのではなく、物件の良さや土地の歴史、オーナーの思いを汲んだリノベーションで新しい価値を付加していくことが、日本の不動産業界ではより重要になってくるだろう。

(著:代表取締役社長岩本裕)